脆弱性診断ツールの種類や選び方のポイント

脆弱性診断ツールの種類や選び方のポイント

近年、様々なサイバー攻撃やそれによる被害がニュースになることが多々あります。総務省が発行する情報通信白書(令和5年度版)によると、サイバー攻撃の規模は2017年の1,559億パケットから、2022年は5,226億パケットとなっており、3倍近くの数値となっています。
サイバー攻撃を防ぐためには、プログラムの不具合や設計上のミスが原因となって発生するITシステムの弱点である「脆弱性」を見つけるための「脆弱性診断」を行うことが非常に重要です。
世の中には脆弱性を発見するための様々なツールが公開されています。本記事では、脆弱性診断ツールのメリットやデメリット、脆弱性診断を選ぶためのポイント、企業内でセキュリティを高めるための施策についてご紹介します。

初めての方でも使いやすい脆弱性診断ツール
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脆弱性診断ツールとは

システムの脆弱性を見つけるための診断ツール

脆弱性診断ツールは、システムやアプリケーション内のセキュリティ上の弱点、いわゆる「脆弱性」を自動的に検出するソフトウェアです。脆弱性とは、攻撃者が悪用可能なソフトウェアやシステムの設計ミスやバグのことを指します。これらの脆弱性を放置すると、データ漏洩やサービス停止など深刻なセキュリティ事故を引き起こす恐れがあります。
脆弱性診断は、これらのリスクを未然に防ぐために行われるプロセスです。さまざまな企業にとって、定期的な脆弱性診断は、セキュリティ対策の基本かつ必須の取り組みと言えるでしょう。脆弱性診断ツールを使用することで、工数を抑えて定期的な脆弱性診断を行うことができ、システムの安全性を効率的に高めることができます。

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脆弱性診断ツールのメリットとデメリット

脆弱性診断ツールのメリット

脆弱性診断ツールのメリットとしては、以下の3点があげられます。

定期診断の容易さ

脆弱性診断ツールの利用は、特に定期診断の実施において大きなメリットを提供します。セキュリティ環境は常に変化しており、新たな脆弱性が日々発見されています。そのため、定期的な診断が非常に重要ですが、手動での診断は人手・時間・コストがかかり実施が難しいことがあります。脆弱性診断ツールの中には、スケジュール設定による自動実施が可能なツールもあります。また通知結果から自動的にレポートを生成する機能がついている場合もあります。
これらの機能により、迅速に脆弱性を把握することが可能となり、常にシステムのセキュリティ状態を最新の状態に保つことができます。したがって安全なIT環境を維持するために必要な定期診断を、より効率的かつ効果的に行うことが可能となります。

コスト効率の向上

次にあげられるメリットとしては、コスト効率の良さです。第三者による手動診断サービスは、専門のセキュリティエキスパートが行うため、高額な費用がかかることがあります。
一方で、ツール診断では自動化されているため、一度設定すれば複数回の診断を追加のコストなく実施できる場合があります。これにより、特に予算に限りがある企業にとっては、セキュリティ対策のコストを大幅に削減できるというメリットがあります。

人に依存しない脆弱性の特定

脆弱性診断においては、最新の情報に基づいて抜け漏れのない診断を行うことが何よりも重要です。手動診断では、診断する人のスキルや経験に大きく依存する場合があります。
一方で脆弱性診断ツールは、最新の脆弱性データベースを基に迅速にシステムをスキャンし、一定の品質でリスクを特定することができます。また、短時間で広範囲の脆弱性を検出可能です。これにより、全社的に統一の基準で診断を行うことができ、セキュリティレベルの維持・向上に寄与します。

脆弱性診断ツールのデメリット

脆弱性診断ツールを導入するうえでのデメリットは、以下の3点があげられます。

専門人材の確保と育成コスト

脆弱性診断ツールの適切な運用とその結果に関する対応策の立案には、専門的な知識を持った人材が必要不可欠です。これらの人材の確保は、特に多くの企業にとっては時間とコストを要する大きな課題です。専門人材を外部から獲得する場合、そもそも市場に人材が少なく採用母集団の形成ができません。また高い給与など魅力的な待遇を設定する必要があり、非常に難易度が高くコストがかかります。更に内部で育成しようとすると、長期的な教育プログラムと実践経験など研修や教育コストが必要となります。

サイバー攻撃手法の複雑化とそれに伴う脆弱性診断ツールの急速な進化に対応するためには、これらの人材に対する継続的な研修が不可欠であり、そのためのコストも考慮する必要があります。
専門人材の不足は、ツールの潜在能力を十分に引き出せないリスクを生じさせ、結果としてセキュリティ対策の効果を損なう可能性があります。このため、専門人材の確保と育成に関する戦略的な計画が、セキュリティ対策の成功には不可欠です。

人為的な脆弱性は診断できない

脆弱性診断ツールは、あくまでもシステムなどにおける脆弱性を診断します。
セキュリティに対する脆弱性は、居室環境といった物理的な環境が起因するものや、アプリケーションの実装面における脆弱性も含まれることがあります。具体的には、前者であればUSBなどの機器について適切な保管や廃棄のプロセスが定められていないことによる情報漏洩、後者であればセッションタイムアウトが長すぎる、またはタイムアウト後にセッションIDが無効にならない実装をしている場合攻撃者がセッションを乗っ取る機会が増える、などです。
手動診断では、専門家がその場の状況を判断し、直感や経験を駆使してこれらの脆弱性を発見することも可能ですが、脆弱性診断ツールでこのような脆弱性を発見することは不可能です。

誤検知と見逃しの問題

脆弱性診断ツールを使用する際の大きな課題の一つが、誤検知(フォールスポジティブ)と見逃し(フォールスネガティブ)です。誤検知は、実際には安全な要素を脆弱性があると誤って識別し、セキュリティチームが不必要な修正作業に時間を割くことを強いられる結果につながります。
一方、見逃しは、実際に脆弱性が存在するにもかかわらず検出できないケースを指し、攻撃者による悪用のリスクを残します。ツールはAIなどを駆使して、このような誤検知や見逃しを最小限にしていますが、どうしても発生するものとして認識しておく必要があります。

脆弱性診断ツールの種類

ソフトウェア型・クラウド型

脆弱性診断ツールには、ソフトウェア型とクラウド型があります。
ソフトウェア型脆弱性診断ツールは、ユーザーが直接自身のシステムにインストールして使用するタイプのツールです。これにより、内部ネットワークやアプリケーションのセキュリティスキャンをローカルで実行することができます。インストール型の利点は、オフライン環境での使用が可能であることや、内部ネットワークにおける細かいセキュリティ設定の検証が行える点にあります。

クラウド型脆弱性診断ツールは、インターネットを介してサービス提供者のクラウドプラットフォーム上で動作します。ユーザーはブラウザやAPIを通じてサービスにアクセスし、外部からのセキュリティスキャンを実施できます。クラウド型のメリットは、最新のセキュリティ脅威に対する自動更新や、どこからでもアクセス可能な柔軟性がある点です。また、設定や管理が簡単であり、拡張性にも優れています。

具体的なツールの例

Burp Suite

Burp Suiteは、PortSwigger社が開発したウェブアプリケーションのセキュリティテストに特化したプラットフォームです。ユーザーがブラウザからWebアプリケーションにアクセスしたとき、サーバーに対するリクエストとレスポンスを分析することで脆弱性を診断します。
無料版と有料版がありますが、無料版でも十分な機能を持っているため、世界中で利用されています。

Nessus

Nessusは、Tenable Network Security社によって開発された業界をリードする脆弱性スキャンツールです。ネットワーク機器、システム、アプリケーションに存在する潜在的な脆弱性を検出し、報告することができます。簡単なセットアップ(数クリックで完了するセットアップ)と直感的なユーザーインターフェースを備えており、専門的な知識が少ない担当者でも扱うことが可能です。

OpenVAS

OpenVAS(Open Vulnerability Assessment System)は、無料でオープンソースの脆弱性診断ツールです。拡張性とカスタマイズ性に優れており、オープンソースコミュニティによって継続的にソフトウェアやシグネチャ(脆弱性を検知するためのデータセット)更新がされています。予算に限りがある企業や研究者にとっては非常に有用なsp首都ウェアとなっています。

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自社に合う脆弱性診断ツールを選ぶ際のポイント

ポイント1:コスト

脆弱性診断ツールを選択する際、最も重要な観点はコストです。初期導入コスト、ランニングコスト、運用のしやすさ、そして特定の環境や要件に適した機能性について考慮することが重要です。以下に、これらの観点を含めた選択のポイントを詳細に説明します。

イニシャルコスト

脆弱性診断ツールの選択にあたって、最初に考慮すべきはイニシャルコストです。高機能でサポートが充実しているツールは高価になる傾向があります。
一方で、オープンソースツールは無料または低コストで利用開始できますが、自身でのカスタマイズや問題発生時のサポートにリソースが必要となる場合があります。導入前には、ツールの価格だけでなく、設定やカスタマイズに要するコストも含めた全体的な初期投資を検討することが重要です。

ランニングコスト

次に、ライセンス更新費用、クラウドサービス利用料金といったランニングコストを考慮します。セキュリティ専門家の継続的な教育やトレーニング費用もランニングコストに含まれます。
イニシャルとランニングを含めて、導入から3~5年にかかる総コストを基準に投資判断を行うといいでしょう。

運用のしやすさ

ツールの運用のしやすさは、日々の作業効率に大きく影響します。直感的なユーザーインターフェース、簡単な設定プロセス、自動化されたスキャン機能、わかりやすいレポート出力機能などが、運用のしやすさを高める要素です。
運用にあたっては、ツールが組織の既存のセキュリティポリシーとシームレスに統合できるか、カスタマイズが可能かどうかも重要なポイントです。

1サイトあたりのコストとスケーラビリティ

特に複数のウェブサイトやアプリケーションを運用している場合、1サイトあたりのコストとツールのスケーラビリティは重要な考慮事項です。脆弱性診断ツールがスケールアウトしやすいか、複数のプロジェクトやサイトに対応できる柔軟性があるかを確認します。

ポイント2:対象範囲

ツールの特質

脆弱性診断ツールを選択する際は、診断対象の範囲や深度、ツールに求める機能性を明確にすることが重要です。
まず、診断したい対象がWebアプリケーションなのか、ネットワークインフラなのか、またはその両方を含む広範なプラットフォームなのかを特定します。Web診断に特化したツールは、ウェブアプリケーションの脆弱性を詳細に分析する高度な機能を提供しますが、ネットワークレベルの脆弱性はカバーできない場合があります。
逆に、プラットフォーム全体の脆弱性を検出するツールは、システムの広範囲にわたるセキュリティ状態を把握するのに適していますが、特定のアプリケーションの深い分析には限界があるかもしれません。

診断の深さ

診断の深度に関して考慮が必要です。浅く広い範囲をスキャンして概要を把握したい場合は、高速で広範囲をカバーするツールが適しています。
一方で、特定のシステムやアプリケーションに存在する深い脆弱性を詳細に分析したい場合は、細かい設定やカスタマイズが可能な、より専門的なツールを選ぶべきです。

ポイント3:サポートの有無

ツールが提供するサポート体制

脆弱性診断ツールを選択する際には、サポート体制の充実度が重要な判断基準の一つです。サポートの有無やその質は、ツールの効果的な運用やトラブル発生時の対応速度に直接影響を与えます。
サポートサービスは、メールベースの問い合わせ対応から、電話やオンラインミーティングによる直接のサポート、さらには緊急時の24時間対応まで、提供範囲は様々です。メールのみのサポートでは、問題解決までに時間がかかる可能性があり、迅速な対応が求められる状況では不十分かもしれません。
一方で、オンラインミーティングによるサポートや緊急対応が可能なサービスでは、より具体的かつ迅速な解決策を提供できるため、運用上の安心感が大きくなります。

運用する人材のスキル

脆弱性診断ツールの運用には、一定レベルの技術的知識が必要とされるため、サポート体制は社内の人材レベルにも影響を及ぼします。
専門的なセキュリティ知識が豊富なチームであれば、サポートの利用頻度は低くても問題ありませんが、セキュリティ専門家が不在、または経験が浅い場合は、充実したサポート体制があるツールの方が適しています。

ポイント4:同時実行できるシステム数

同時実行数

多くの企業では、複数のシステムやアプリケーションを同時に運用しています。これら全てに対して脆弱性診断を効率的に実行するためには、同時実行数が何よりも重要です。
ツールによっては同時にスキャンできるシステムの数に制限があり、大規模なインフラストラクチャを持つ組織にとっては、この制限が診断作業の効率に大きく影響します。

資産管理機能の有無

ツールによっては、社内にどのようなシステムやWebアプリケーションがあるのか、一覧を表示して保存する機能を持つツールもあります。これにより、企業内でどのようなIT資産を保有しているか可視化できます。
可視化することで、脆弱性診断を急ぎ対応する必要があるものやそうでないものを区別することができるため、脆弱性ツールの同時実行数が少なくても優先順位をつけて対応ができます。

脆弱性診断ツールを利用するにあたっての留意点

一つの手段ですべてのリスクが防げるわけではない

脆弱性診断ツールを利用することは、セキュリティリスクを軽減する重要な手段の一つですが、すべてのリスクを防ぐ万能の解決策ではありません。これらのツールは主に情報システムに対する既知の脆弱性や一般的なセキュリティの弱点を検出するために設計されており、新たに発見される脆弱性に対応できないケースも存在します。
また、人為的なミスなどに起因するセキュリティ問題は検知することが難しいです。ペネトレーションテストや専門家の業務プロセスに対するコンサルティングといった、様々なサービスを組み合わせることでセキュリティ対策は初めて万全になるといえるでしょう。

診断をしていない対象にもリスクがある可能性

セキュリティを万全にするためには、ツールやサービスを組み合わせることと同時に、全社的なガバナンスや周知の仕組みも重要です。
たとえば、IT部門が把握せず、他の部門で勝手に公開されたWebサイトなどが存在する場合、これらは通常の脆弱性診断の範囲外となりがちです。しかし、攻撃者はこれらの見落とされた資産を標的にすることがあり、組織全体のセキュリティを脅かすことになります。そのため、全社的な情報システムの資産を網羅的に把握する仕組みを作るのは勿論のこと、強制力を持たせる社内規程等に文書化することも非常に重要です。

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はじめての方でも使いやすい国産セキュリティ診断ツール

『GMOサイバー攻撃ネットde診断』は初めての方でも使いやすい国産の脆弱性診断ツールです。

自社が保有する診断対象の棚卸から実施

GMOサイバー攻撃ネットde診断では自社が保有するIT資産の棚卸から実施します。昨今、クラウドサービスやホスティングサービスの普及により、サービスをインターネット上に簡単に公開することができるようになりました。一方で、各サービス事業部門や海外子会社が独自にこれらを公開してしまうことで、セキュリティチームが存在を把握できていないWebサイトやネットワーク機器などのIT資産が増加しています。これらの未把握資産を棚卸したうえで、全社の脆弱性管理を行うことが可能です。

同時に大量のシステムに対して安全な診断を実行可能

GMOサイバー攻撃ネットde診断は100FQDNなど、大量のシステムに対して同時に定期診断を実行することが可能です。本番環境に影響を与えない範囲でWebアプリケーション診断やプラットフォーム診断を同時に実行いただけます。

充実なサポートとわかりやすい画面で誰でも簡単に利用可能

外国のツールであれば利用画面やガイドが機械翻訳で時折読みにくいケースもあると思います。『GMOサイバー攻撃ネットde診断』は国産ツールであるため、不自然な翻訳に悩まされることがありません。各種のドキュメントも、セキュリティに自信がない方でも読みやすいように作成されています。
診断結果は、影響度をもとにツールが脆弱性を自動でランク付けするため、対応の緊急度が分かりやすく理解できます。また、診断結果に対する専門的なアドバイスやコンサルティングを受けることも可能です。

脆弱性診断ツールご紹介資料

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監修:GMOサイバーセキュリティ byイエラエ 編集部

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