セキュリティレーティングとは?選び方やASMとの違いを解説

更新日:2024.11.25
セキュリティレーティングとは?選び方やASMとの違いを解説

セキュリティレーティングは、企業のセキュリティ対策状況を数値化し、外部や内部でのリスク評価に役立つツールです。本記事では、セキュリティレーティングの基本的な役割や脆弱性診断との違い、選ぶ際のポイントについて解説しています。特に、評価の目的やスコープの設定、スコアリングの基準確認、改善提案を含むレポート内容の重要性について詳述しています。

これらを読むことで、セキュリティレーティングがどのように企業のリスク管理やサプライチェーンの安全性向上に役立つかを理解し、自社に最適なレーティングサービスの選定に役立つ知識を得られます。

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セキュリティレーティングとは

セキュリティレーティングとは、企業やシステムのセキュリティ対策状況を「数値」や「ランク」で表し、外部からのリスクを視覚的に評価する仕組みです。専門の組織やツールを活用して、サイバー攻撃者と同じ目線で企業のセキュリティ状況を評価し、数値化します。

近年、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが増える中、セキュリティ対策の強化が求められています。しかし、多くの企業が「何から始めるべきか分からない」や「自社のセキュリティ水準が十分か不安」という問題に直面しています。セキュリティレーティングは、企業のセキュリティ状態を評価し、改善点を明確にすることで、こうした課題に対応するために生まれました。

例えば、信用格付けのように「A、B、C」のようなランクで評価される場合や、100点満点のスコアで示される場合もあります。これにより、自社がどの程度リスクにさらされているのか、他社や業界標準と比べてどの水準にあるのかが分かりやすくなります。特にサプライチェーンを管理する企業や、グループ会社を複数持つ企業にとって、各拠点や協力会社のセキュリティ状態を把握する手段としても有用です。

主なセキュリティレーティングの用途

セキュリティリスク領域の特定

セキュリティレーティングは、自社のどの部分にリスクが集中しているかを明確にできます。例えば、社内のITインフラ環境のセキュリティレーティングを取得した結果、ネットワーク機器の設定が甘いことが判明したとします。こうした情報を基に、ネットワーク部門と協力して強化策を打つことで、リスクを低減する行動が取れます。
このように、具体的なリスク領域を特定することで、優先的に対策すべきポイントが見えてきます。

継続的な評価によるリスクの可視化、改善

セキュリティレーティングは定期的に評価が行われるため、継続的に自社のセキュリティ水準をモニタリングできます。例えば、年に数回のレーティングチェックを行うことで、過去の数値と比較しながら「どの部分が改善されたか」「新たなリスクが発生していないか」を確認できます。
改善の効果が数値として反映されるため、従業員にも「セキュリティ向上のための取り組みが成果を出している」ことが伝わりやすく、社内の意識向上にもつながります。

グループ会社やサプライチェーンのリスク管理

複数の拠点やグループ会社を持つ場合、各拠点のセキュリティ対策の水準が異なることがよくあります。セキュリティレーティングを利用すれば、各拠点の評価を取得できるため、全体のリスク状況が可視化されます。
たとえば、A拠点は「Bランク」、B拠点は「Cランク」と評価された場合、B拠点の対策を強化することが求められるでしょう。

投資判断

セキュリティ対策への投資を判断する際、セキュリティレーティングが有効な指標となります。レーティング結果が低い場合は、具体的なセキュリティ対策への投資が必要であることが明確になり、経営層も投資判断をしやすくなります。例えば、レーティング結果に基づいて「ファイアウォールの強化」「クラウド環境の見直し」など、改善効果が期待できる部分に投資を集中できます。

セキュリティレーティングの必要性

近年、サイバー攻撃の件数が増加し、その手口も巧妙化しているため、企業は迅速かつ継続的に自社のセキュリティ状態を把握する必要性が高まっています。特に、ランサムウェアやフィッシングといった攻撃の増加により、企業の情報資産や顧客データの保護が以前にも増して重要になっています。また、グローバル化が進む中で、多くの企業がサプライチェーンに依存しています。

サプライチェーンは、製品やサービスを提供する際の取引先や協力会社のネットワークであり、そこに含まれるパートナーのセキュリティが脆弱だと、自社のシステムに悪影響を及ぼすリスクが生じます。

セキュリティレーティングは、こうしたサプライチェーン全体のリスクを可視化するための手段としても重要です。協力会社のセキュリティレーティングを確認することで、取引先が十分なセキュリティ対策を講じているかを評価でき、リスクのある取引先には改善を促すことが可能です。

このように、サイバー脅威の増加やサプライチェーンへの依存が強まる現代において、セキュリティレーティングの必要性が一層高まっています。

セキュリティレーティングとASM(Attack Surface Management)の違い

セキュリティレーティングは、企業のセキュリティ状況を数値やランクで評価し、外部からのリスクを評価する仕組みです。主な目的は、組織全体のセキュリティ状況を第三者的な視点で評価し、経営層や投資家が投資判断や戦略的決定に役立てることにあります。

評価は主に、外部から収集できる公開情報(OSINT: Open Source Intelligence)を用いて行います。例えば、公開されているセキュリティポリシーや脆弱性の有無、過去のインシデントなどのデータを収集し、組織のセキュリティ体制を総合的に評価します。

このため、経営層や投資家といった外部の関連者が提携先や投資先のリスクを理解するための手段として使われることが多いです。

セキュリティレーティングのスコープは、主にパッシブスキャン(アクティブな操作を行わずに、外部からアクセス可能な範囲で評価を行う方法)となっており、組織内での詳細な情報にはアクセスしません。そのため、OSINT系の機能や第三者組織の評価に関する機能が充実しており、他社組織のセキュリティ状況をリスクスコアやランク形式で可視化するのが一般的です。

ASM(Attack Surface Management)は、自社および関連会社の外部公開資産とそのセキュリティリスクを把握し、適切な対処を実施する取り組みです。 ASMの主な目的は、攻撃者が利用できる可能性のある自社の攻撃対象領域(攻撃ポイント)を可視化し、管理することです。具体的には、外部から見える自社のIT資産(ウェブサーバー、クラウドインフラ、ネットワーク機器など)がどのように見えるかを分析し、新たな脆弱性や潜在的なリスクを継続的にモニタリングします。

これにより、未知のリスクや新たな脆弱性を発見し、迅速に対策を取ることが可能になります。多くのASMツールは資産の探索機能や脆弱性管理機能が充実しており、攻撃者がアクセスし得る情報を企業内部から把握することを重視しています。さらに、特定のASMツールではアクティブスキャン(ツールが積極的にサーバやネットワーク機器にアクセスし、詳細な情報を収集する方法)を行うことが可能で、より深いレベルでの脆弱性チェックができます。

このように、セキュリティレーティングが外部の第三者を含めて組織全体のセキュリティ状態を評価する手段であるのに対し、ASMは自社関連会社を中心としてセキュリティ状態を維持し、管理する手段として利用されます。

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セキュリティレーティングと脆弱性診断の違い

セキュリティレーティングと脆弱性診断は、目的や評価方法において異なります。セキュリティレーティングは外部からの情報を基にして組織全体の評価を提供し、経営層や投資家に向けて情報を発信します。一方、脆弱性診断は特定のシステムに焦点を当て、内部の技術者によって実施されるため、より具体的な改善点を抽出することができます。

脆弱性診断では特定のシステムに存在する脆弱性を網羅的に確認し、リスクを評価します。主な目的は、具体的なシステムのセキュリティリスクを特定し、改善点を見つけることです。脆弱性診断は、手動または自動ツールを用いて、診断項目に沿って攻撃的な通信も含めて調査が行われます。利用者はプロダクト管理者や情報システム、セキュリティ担当者であり、診断結果は主に内部での改善や修正に役立てられます。

一方でセキュリティレーティングは公開情報を用いて、外部の第三者企業を含む組織全体のセキュリティリスクを評価します。主に外部組織の評価を行うため、パッシブスキャンを使用してリスクを把握します。脆弱性診断と異なり網羅的な脆弱性の評価ができない一方で、対象に負荷を与えずにリスクを評価できることから外部機関のリスク評価に適しています。

セキュリティレーティングサービスを選ぶ時のポイント

評価の目的とスコープを明確にする

セキュリティレーティングサービスを選ぶ際、まず「どの目的で評価を行うのか」を明確にすることが重要です。
自社のセキュリティの現状を把握したいのか、または特定の業界基準や規制への準拠状況を確認したいのか、さらに、サプライチェーン全体のリスクを評価してパートナー企業のセキュリティ状況を把握したいのかによって、選ぶべきサービスが異なります。
例えば、サプライチェーンのリスク管理を重視する場合、パートナーや協力会社のセキュリティ状況も可視化できる機能が求められます。また、自社の対策状況を定量化して現状を把握し、内部での改善計画に活用する場合は、詳細な診断とフィードバックが提供されるサービスが有用です。

このように、評価の目的やスコープを明確にすることで、企業のニーズに合ったセキュリティレーティングサービスを選定することができます。

サービスが採用している評価基準を確認

セキュリティレーティングサービスは、それぞれ異なるスコアリング方法や基準を採用しているため、利用する前に基準の明確さや信頼性を確認することが大切です。
たとえば、あるサービスではOSINTを基にスコアを算出している一方で、別のサービスでは企業が提供する内部情報も考慮して総合的な評価を行う場合もあります。
スコアの基準が明確に示されているか、評価の透明性があるかどうかを確認することで、評価結果に対する信頼性が向上し、具体的な改善アクションにつなげやすくなります。

レポートの内容

セキュリティレーティングサービスのレポート内容も重要な選択ポイントです。
単にスコアや評価結果だけを提示するのではなく、具体的な改善提案が含まれているかどうかを確認しましょう。改善提案やアクションプランが含まれていれば、評価結果に基づき具体的な対策を講じやすくなります。
また、レポートが視覚的にわかりやすいグラフやチャートで提供されているか、セキュリティ担当者以外にも理解しやすい表現がされているかも重要です。経営層や他部門とのコミュニケーションにおいても、わかりやすいレポートは有効です。こうした詳細な内容が含まれていることで、組織全体でのセキュリティ向上につながる施策を迅速に展開することが可能です。

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