WAFとは?セキュリティ対策の必要性や仕組みを解説

Webアプリケーションへの攻撃は年々増加しており、企業にとってアプリケーション層の防御は欠かせない課題となっています。本記事では、Webアプリケーションを運用するすべての企業担当者に向けて、WAF(Web Application Firewall)の役割や必要性、基本的な仕組み、そしてAWS WAFを導入する具体的な流れまで解説します。
目次
WAFとは?
WAFは、Webアプリケーションを狙ったサイバー攻撃を防御するためのセキュリティ対策です。通常のファイアウォールがネットワークレベルで通信を制御するのに対し、WAFはWebアプリケーションのリクエスト内容を精査して、不正な操作や悪意ある入力を検出・遮断します。たとえば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)など、アプリケーション層の攻撃に対して効果を発揮します。
クラウド環境の普及に伴い、Webアプリケーションを狙った攻撃が急増している今、WAFの導入は、企業のセキュリティ対策において必須となっています。
Webアプリケーションに必要なセキュリティ対策とは?
Webアプリケーションはインターネットに公開するという性質上、世界中の攻撃者の標的になります。したがって、「不審なアクセスを防御する」「万が一に内部に侵入されたとしても被害を拡大させないように対策する」といった多層の防御が基本となります。具体的にどのような防御方法があるのかご紹介します。
不正なネットワークを遮断するファイアウォール
ファイアウォールは、外部からの不要な通信を遮断し、内部ネットワークを守るための基本的なセキュリティ機能です。たとえば、業務で使用しないポート(例:TCPの12345番など)を閉じることや、不審なIPアドレスからのアクセスをブロックすることが可能です。これにより、攻撃者がサーバーに侵入しようとする試みを事前に防ぐことができます。
Webアプリケーションを守るためには、まず外部からの「不必要な通信を通さない」ことが第一歩です。AWS環境でも、セキュリティグループやネットワークACLを使って、基本的なファイアウォール機能を実装できます。「必要な通信だけ通し、余計なものはすべて遮断する」という考え方が、セキュリティの基本です。
サーバーのマルウェアを防御する
サーバー内部に侵入された場合に備えて、マルウェア対策も欠かせません。
特に近年は、サーバー内のデータを暗号化し、身代金などを狙ったランサムウェア攻撃が急増しており、対策を怠るとシステム停止やデータ漏洩のリスクが高まります。マルウェア対策ソフトをインストールし、リアルタイムでファイルの異常を検出する仕組みを導入することで、侵入後の被害拡大を防げます。たとえば、AWSではGuardDutyと連携して、不審な動きを検知・アラートを出す仕組みも利用できます。
「防御できなかった場合を考えた備え」も、セキュリティ対策では重要な考え方です。
IPS/IDSによる検知
どんなに堅牢な防御をしていても、完全に侵入を防ぐことは難しいため、侵入後を見越した仕組みが必要です。IPS(Intrusion Prevention System)とIDS(Intrusion Detection System)は、ネットワークやサーバーへの不正侵入を検知・対応する仕組みです。
IDSは不審な通信を検知してアラートを上げる役割、IPSは怪しい通信を自動で遮断する役割を持ちます。たとえば、IDSで「SQLインジェクションのような不正リクエストが観測された」と検知し、IPSが即座にその通信を遮断するイメージです。
防御と検知を組み合わせることで、侵害後の迅速な対応が可能になります。
Webアプリケーションそのものを狙う攻撃の防御
最近のサイバー攻撃は、サーバーやネットワークだけでなく、Webアプリケーション自体を直接狙うものが増えています。たとえば、ログイン画面やお問い合わせフォームに不正なコードを入力し、システムを乗っ取ろうとする攻撃(SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティングなど)が代表例です。
こうした攻撃を防ぐために必要なのがWAFです。WAFは、通常のファイアウォール(ネットワーク層)とは違い、HTTPリクエストやWebアプリ特有のパターンを検査して、不正な通信だけを検出・ブロックします。
また、IPS/IDSは一般的な不審通信の検知が中心ですが、WAFは「Webアプリケーションに特化した防御」を担う点が特徴です。つまり、ファイアウォールやIPS/IDSだけでは防げない「アプリケーション層の攻撃」を補う重要な役割を持っています。
Webサイトやアプリケーションを運営するなら、WAFの導入はもはや必須と言えるでしょう。
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WAFの必要性
増加するWebアプリケーション
近年、私たちの生活はWebアプリケーションによって大きく支えられています。たとえば、オンラインショッピングサイト、キャッシュレス決済アプリ、サブスクリプション型の動画配信サービスなど、あらゆる場面でWebアプリケーションが使われています。
企業も、業務システムや顧客向けサービスをWebアプリケーション化したり、SaaSを導入したりといったケースが急増しており、特にスマートフォン対応を前提としたクラウドサービスが一般化しました。
Webアプリケーションの増加に伴い攻撃対象も増加
このような状況により、企業がWebアプリケーションを持つこと自体が当たり前になった一方で、攻撃者にとっても狙う対象が増えたことを意味します。つまり、「Webアプリを公開する=常に攻撃リスクを背負う」という時代に突入しています。
この背景を踏まえ、Webアプリのセキュリティ対策、特にアプリケーション層を保護するWAFの導入が不可欠となっています。
WAFの仕組み
WAFは、Webアプリケーションに向かうリクエストをリアルタイムで監視・検査する仕組みを持っています。まず、WAFはパケットキャプチャ方式により、インターネットから送られてくる通信データ(パケット)を受け取り、その中身を詳細に解析します。
解析方法としては、シグネチャベースやパターンマッチング方式が一般的です。これは、既知の攻撃パターン(シグネチャ)と通信内容を比較し、一致すれば攻撃とみなしてブロックするという仕組みです。たとえば、SQLインジェクション特有の文字列パターンが検出されれば、攻撃として即時遮断されます。
また、WAFには「ブロックモード」と「記録のみモード」の設定が可能です。
- ブロックモード
危険なリクエストを検知した時点で即座に遮断 - 記録のみモード
検知したリクエストをログに残すが、通信自体は許可する
導入初期は記録モードで様子を見てから、ブロックモードに切り替える運用も一般的です。なお注意点として、WAFは暗号化された通信(HTTPS)内部のデータを直接見ることができない場合があります。このため、SSL終端をWAFの前段で行う(リバースプロキシ型WAFを使う)など、設計上の工夫も必要です。
WAFは、ただの通信フィルターではなく、アプリケーションを守る「頭脳」を持った防御システムなのです。
WAFでできること
WAFで防御できる攻撃とは
WAFは、主にWebアプリケーション層を狙った代表的な攻撃を防御することができます。
たとえば、以下のような攻撃があります。
- SQLインジェクション
ログイン画面や検索フォームに不正なSQL文を送り込み、データベースから情報を取得する、不正アクセスを行うなどの攻撃 - クロスサイトスクリプティング(XSS)
悪意あるスクリプトをWebページに仕込み、ユーザーのブラウザで不正な動作をさせる攻撃 - クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)
ログイン中のユーザーに意図しない操作をさせる攻撃 - パストラバーサル
サーバー内の本来アクセスできないファイルを不正に取得しようとする攻撃
これらは、ファイアウォールやIPSでは防ぎにくい、Webアプリケーション特有の脆弱性を突いた攻撃です。WAFは、リクエストの中身(URLやフォームの入力値)を精査して防御できるため、アプリケーションを守る最後の砦として非常に有効です。
WAFの基本的な機能とは?
WAFには、Webアプリケーションを守るために必要ないくつかの基本機能が搭載されています。
機能に応じたWAFの分類
まず、ホスト型WAFとネットワーク型WAFという分類があります。ホスト型はサーバー内にソフトウェアをインストールして動作し、個別サーバー単位で防御します。ネットワーク型は通信経路上にWAFを配置し、複数サーバーへの通信をまとめて防御できます。AWS WAFはこのネットワーク型に該当します。
シグネチャによる防御
次に、シグネチャによる防御です。これは、既知の攻撃パターン(シグネチャ)と一致する通信を自動的にブロックする仕組みです。最新の脅威に対応するためには、シグネチャの定期更新が重要です。
IPアドレスのブロック機能
さらに、IPアドレスのブロック機能もあります。特定の国や、攻撃元として検知されたIPアドレスをリストに登録し、通信自体を遮断することができます。たとえば、海外からの不審なアクセスだけをシャットアウトすることも可能です。
通信の監視
WAFでは、通信の監視機能により、攻撃の兆候や異常なリクエスト数をリアルタイムで検知し、管理者に通知できます。ロギング機能も重要で、すべての通信ログを記録しておくことで、後からインシデント調査や対策の検討に活用できます。
このようにWAFは、単なる防御だけでなく、監視・記録・分析といったセキュリティ運用全体を支える機能を備えており、Webアプリケーションの安全運用に欠かせない存在となっています。
WAFの導入方法と設定の流れ
AWS WAFの導入について
AWS環境でWAFを導入する場合、主にAWS WAFというサービスを利用します。導入の全体的な流れは以下のとおりです。
関連記事:AWS WAFとは?仕組みや導入方法、設定の流れを解説
構成の確認
まず、構成の確認を行います。どのサービス(例:ALB(ロードバランサー)やCloudFront(CDN))にWAFを適用するかを決めます。たとえば、ECサイトのALBに直接WAFを適用したり、CloudFront経由でグローバルにWAFを配置するケースもあります。
製品の選定
次に、製品の選定です。AWS純正のWAFを使うか、AWS Marketplaceにあるサードパーティ製品(F5、Fortinetなど)を使うかを検討します。通常は、AWS純正のWAFがコスト・管理面で手軽なため、まずはAWS WAFを選ぶケースが多いです。
防御ルールの設定
その後、ルールの設定に進みます。AWS WAFでは、SQLインジェクションやXSSなどの攻撃に対応する「マネージドルール」があらかじめ用意されています。これらを選択し、自社に必要なカスタムルール(特定の国IPブロックなど)も追加します。
関連記事:AWS WAFのAWSマネージドルールについて選定ポイントと重要性を解説
本番環境への適用
最後に、本番環境への適用を行います。この際、最初は「モニタリングモード(記録のみ)」で動かし、実際のトラフィックにどんな影響が出るかを確認します。問題がなければ、徐々に「ブロックモード」へ切り替えます。いきなりブロックするのではなく、テストを経て慎重に適用するのが失敗しないポイントです。
WAF導入後の運用とは?
WAFは導入して終わりではなく、継続的な運用が重要です。まず、ログの確認やトラフィック分析を定期的に行いましょう。
AWS WAFでは、どのルールでどのリクエストがブロックされたかを詳細にログ出力できます。これをもとに、「正当なリクエストを誤って検知していないか」「新たな攻撃パターンが発生していないか」を分析します。次に、ルールの更新確認が必要です。攻撃手法は日々進化しているため、マネージドルールやカスタムルールも定期的に見直し、新しい脅威に対応できるようにアップデートしていくことが重要です。
また、コスト監視やチューニングも忘れてはいけません。AWS WAFはルール数やリクエスト数に応じた従量課金制のため、不要なルールが増えてしまうことや、無駄なトラフィックを許可してしまうとコストが上昇することがあります。 ルールの整理やフィルタリングの強化を通じて、セキュリティとコストの最適化を両立することが求められます。つまり、WAF導入後は、「監視・改善・最適化」のサイクルを回し続けることが、安全かつ効率的な運用のカギになります。
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監修:GMOサイバーセキュリティ byイエラエ 編集部

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